紫電Pの雑記帳

ニコニコのブロマガ閉鎖に伴い移転しました。主にアイマス関連の記事を書きます。2021年9月以前の記事はブロマガから移行したものです。

765ミリオンのMRライブ「Dreamin’ Groove」に向けて、765プロとMRの歴史を振り返りながら公演内容を予想する

 

 

 

 昨年12月に初報のあった765ミリオンのMRライブ「765 MILLIONSTARS LIVE 2023 Dreamin’ Groove」(以下Dreamin’ Groove)の詳報が18日のミリラジで発表されましたね。

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 2018年春と秋、そして20年に計3回開催された765ASのMRライブ「THE IDOLM@STER MR ST@GE!! MUSIC♪GROOVE」(以下MR ST@GE)とのタイトルの関連性や、これまでのMRの取り組みから正統進化形とも期待されるこのイベントですが、キャパ350で実施されたMR ST@GEを現地で体験した方は少なく、また近年に新規で加入された方は「そもそもMRってなんやいね?」という方も多いかもしれません。

 

 この記事ではMR ST@GEの1stから参加してきた私が、これまでのアイマスとMRの取り組みと発展を振り返りながら、きたるDreamin’ Grooveへの期待を記してみたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

■1.アイマスとMRのはじまり

 

 MRの企画が動き出したのは、2017年でした。この年実施された765ASの第一回プロデューサーミーティングにて、開演前のスクリーンに等身大の天海春香が「生で登場」。これは前年発売の「プラチナスターズ」のモデルを等身大に引き延ばしたものでした。私は現地参加していませんでしたが、円盤でも春香の生っぽい動きと声に会場が沸いていたのが確認できます。この試みが好評だったことが追い風にもなり、MRの本格的な推進が決まりました。

 

 次回作「ステラステージ」の開発が完了した時期と重なる同年の秋から、MR ST@GEの企画が本格化します。翌年3月、割と唐突に1ヶ月半後のイベント開催が発表されました。ニコニコ生放送にて、原由実さん、浅倉杏美さんと、当時の総合PのガミPこと坂上陽三さんが出演して生配信での告知が行われています。

 1st、2nd、ENCOREとも、開催日まで2ヶ月切ってから詳報が告知されるのは変わらないので、ここはもう少し早くしてほしかったですが……。今回は一報が半年前、開催時期告知が2ヶ月前、出演発表が1ヶ月半前なので多少はマシ、でしょうか。

 

 とはいえ、1stの告知では「アイドル達がゲームの世界を飛び出して等身大サイズでライブをするらしい」ということしかわからず、「主演システム」という制度もどういう意味を持つのかは不明でした。ガミPからは「担当Pは主演の日には来た方がいい」とだけ言われていましたが。

 

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www.youtube.com

 公式PVはこちら。今見れば意図はまあわかりますが……。

 

 

 MR ST@GEを一貫して担当していたのは、バンナム勝股春樹さん(以下勝股P)。アイマスの生みの親であるディレ1こと石原章弘さん(現・グッドスマイルカンパニー)の下で765ASの9thライブやミリオンの1stライブなどのチームスタッフを務め、その後このMR ST@GEの企画に携わりました。アイマスの生配信や配信ライブなどの拠点になっている未来研の立ち上げと運用にも関わっているほか、ミリオンでは2021年の7thRライブまでチームの中核スタッフとして活躍。現在は「ヴイアライヴ」の担当Pでもある方ですね。

 この勝股Pと、アイマスPにはおなじみの演出家であるJUNGOさんが横浜駅に近い「DMM VR THEATER」に企画を持ち込んで快諾されたことから、MR ST@GEは始まりました。

 

 

 

■2.MR ST@GE 1st SEASONの試行錯誤

 

 

 この放送の後、MR1stの特設ページがオープンしました。主演アイドルの割り振りは以下の通りで、1日3公演の構成です。

idolmaster.jp



 

 

 当時の私は地方住みで、最後と思って初現地で参加した初星宴舞でライブ沼にはまり、過去のライブBDをかき集め、そしてグリー時代は敬遠していたミリオンにどっぷり浸かり始めた頃でした。

 ただこの時はいったいどんなものなのか見当もつかず、公演時間が1時間というのも相まって「等身大のライブ映像を見るにはちょっと割高かな」という印象を持っていました。また、単純にGWに連休が取れなかったこともあり、「評判が良ければ後半戦に行こう」と判断していったん様子見に回っていました。

 私以外にもそう考えていた方は多かったようで、1stは口コミが広がるまではキャパ350でも半分~6割程度しか埋まらないのもザラで、千早や貴音のようなASでも人気上位の主演回でも当日券が売り出されるほどでした。

 ……今では、隔世の感がありますね。

 

 

 

 2018年4月30日、公演初日のトップバッターはアイマスのセンターオブセンター、天海春香でした。

 MR ST@GEでは1stからENCOREまで、基本的には以下のような構成が踏襲されました。フルで歌うソロ曲とMCパート以外は、ゲームサイズのMVを再構築したものが流れる形式です。なお、ソロ曲はコロムビアランティスフロンティアワークス何でもありでした。

 

dic.nicovideo.jp

ニコニコ大百科より引用。これは1stのセトリ。

 

 

 MR ST@GEでは、等身大のキャラクターモデル(ステラステージのモデルを4Kサイズにするなどリファインしたものが使われていました)が、ステージ手前の透明のスクリーンに投影されます。背景は背景で別に、ゲームでのステージのような画像や映像がステージ後方に表示。両サイドにもスクリーンがあり、こちらも演出や後述のMCシーンで活用されました。

画像は以下のプレスリリースより引用。

prtimes.jp

 

 

 

 

バンナム公式より引用

 

 

 半ば人柱のような形でこけら落としに参加したPたちは、「等身大で見られるのはこれはこれですごいけど……」といった感じで、参加した方からコールだけでなく立つのか座るのかなどなど、どう対応したものか迷いもあったと聞いています。ですが、中盤に入ると状況は一変しました。

 

 「スタンダーップ!!」

 

 その煽りの台詞は、聞き慣れた声だけれどゲームの既存音源ではない、「天海春香」の声。明らかに生で撮っている見たことのないモーション。そんな彼女がリアルのダンサー2人を引き連れて「生歌」を歌ったのは、ミリオンライブの初ソロ曲「キラメキ進行形」でした。

 リアルタイムで歌って踊っている「春香」が見られただけでなく、生身のダンサーさん(アイマスライブに出演経験のある方々です)と連携しながらパフォーマンスをする姿は、それまでとは違って実在性を一気に高めるものでした。とはいえ、これはまだ序の口に過ぎなかったのですが……。

 

 その後のMCも、徹底して「天海春香」であり、演者の色は極力漏らさないものでした。試行錯誤の色が強かった1stでは、舞台裏なのかステージMCなのか今一つ判然としないものでしたが、共通して観客を指名してのトークがあり(1stでは席番号で指名)、最後のソロ曲の演出や衣装、アクセサリーなどを我々が候補ごとに指定された色のサイリウムを振る投票形式で決めることができました。

 MCで登場する「春香」にとってはアイドルマスターはコンテンツではなく「公演名」であり、これまた伝聞なのですが声優ネタは反応できない一方で、オフに訪れるべき近隣の観光地として「港の見える丘公園」を挙げられると「懐かしい気持ちがします」と返すといった巧みさがあったと伝えられています。

 

※アケマス~アイマス2でたびたび登場する場所。無印はラストライブ前にも来るので印象に残りやすい。古参にとってはいわゆる聖地。

※ミリシタでも美希のSSRで登場。

 

 

 

 

 「実在性」。春香主演回に限らず、多くの参加者はMRの真髄をここだと評価します。だからこそ、セトリが共通であってもリピートする人が後を絶たなかったのです。

 

 

 この仕組みの種明かしをすれば、演者さんがステージ備え付けのカメラの映像越しに我々を見ながら、当意即妙のパフォーマンスをしているといった具合です。ただ、演者さんが深くキャラを把握しているのはもちろん、その知識を適切かつ自在に引き出してキャラクターを崩さずやり取りをしなくてはならないため、非常に難易度が高い代物となっています。

 だからこそ、演者とスタッフの尽力、野暮なことはしない観客との協力で星野源さん言うところの「(みんなで作る)嘘が嘘じゃなくなる」効果が実在性につながり「○○がそこにいた!!」となるのですが。

 

 

 そのためにも演者さんは自分自身が漏れないことを徹底し、後日言及する際にも「立ち会った」「見届けた」「居合わせた」といった表現を使っています。また、平田宏美さんは自身の歌唱回数にMRをカウントしておらず、2ndで3回歌った「絶険、あるいは逃げられぬ恋」について後の2020年に「(MOIW2015の)1回しか歌っていない」と述べて世界観を守っていました。

 

 なお、多少ばらつきはありますがアイドル側の設定としては、一定程度経験を積んだ状態でほんのり過去のアイマスシリーズとつながりがある感じでした。

 また、ミリオンの曲は歌う形ですが、765プロ世界線についてはふんわりした形で明言しないスタイルでしたね。後述する亜美真美の主演回では、観客にモノマネを募る際にあたって「"この公演に出ている"765プロのアイドルから」という条件をつけることで、どうとでも受け取れるように工夫していました。

 

 

 

 

 

 

 

 私は1stについては、5/11-12の真回と千早回×2の計3回参加しました。チケットは一般で取りましたが、それでも真ん中やや後方レベルで、今では信じられませんがこの2人でさえどの公演もそこそこ空席がありました。この時の真のソロ曲は「tear」と「自転車」が披露されています。

 

 

 

 

  詳細については当時レポを書いているので、公演後間もない生々しい感想はこちらで読んでいただければと思います。まだブログでの文体が確立される前なので、かなり読みにくいのですが……。

 

siden-p.hatenablog.com

 

 

 結論から言えば「菊地真がそこにいた」というものでした。もちろんリアルタイムでのモーションキャプチャーされた3Dモデルとか生歌唱生トークとか、ダンサーさんと連携したパフォーマンス諸々による実在性の強化もあるのですが、アイマスライブの根幹である「観客も触媒になってキャラクターを顕現させる」という技法のひとつの到達点と感じたというのが大きいです。

 「arcadia」と「眠り姫」がソロで歌われた千早回では、現実のステージに置かれた椅子に千早が座って歌うという演出があり(モーションキャプチャー側に同サイズの椅子を設置)、現実との境界線がバグるという経験をすることになります。ちなみに発案者はJUNGOさんとのこと。

 

 アイマスチームからは、無印以来のゲームスタッフでJupiterの育ての親でもある遠藤暢子さんや、現在のミリシタのエンジニアも務める佐々木直哉さんら少数精鋭のスタッフが関わり、またサウンド担当としては中川浩二さんが現場にいました。その中川さんがモーションについて「(洗練されていない)生のままの状態を出すだけでもこんなに良いんだね」と発言していたということですが、これはまさにその通りで、粗さもあるもののゲームとはまた違った躍動感があるモーションが、より「生っぽさ」を引き立てていたと思います。

 勝股Pが「とにかく、『アイドルがそこにいる!』と思って欲しいんです。CGや人形が動いている、ではダメで、さらにその先の表現を追い求めました」と当時を振り返っていますが、その試みはこの時点でも一定程度成功していたと思います。

 

 

 

 いずれにしても、私にとって1stは「アイマスの未来はここにある」と、強く刻まれたイベントでした。

 

 

 他方、当時のブログにも書いていますが、課題も多く感じました。千早回は今井麻美さんの喉の不調と重なったことにより、後にも先にもない大事故寸前の公演に出くわしました。MCもこの形式は事故率が高く、厄介な人がいれば破綻しかねません。

 モーションキャプチャーも当時の設備ではまだ限界があり、衣装の袖や指先が暴れることがありました。また、どうしても平面のスクリーンに投影する都合上、箱が横に広いと端の席は実在性が薄れるという課題も明らかでした。けれど、それは技術の発展とともに解消し得ると感じるものでした。

 

 1stのレポを書き上げ、私は最後にこう書いて読者に参加を促しています。

 

 この時点では「とは言え、このレベルでやれるのはASだけでしょ」という思いもあったのですが……。それはそれ。5年前ですからね。まだシャニマスがサービス開始して2週間とかその頃です。

 

 そしてその「進化形」は、4ヶ月後に見せつけられることとなります。

 

 

 

 

■3.衝撃の2nd SEASON。秋月律子の降臨

 

 同年8月のプロミで発表された2nd SEASONは、以下のような構成でした。

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 私は22-24日にかけて遠征し、雪歩回×1、律子回×2、真回×2の計5回に参加しました。1stからの口コミ効果によりチケットの売れ行きは好調で、当日券が出た回も最終的に概ね満席になりました。さらに、主演が1日しかない真、あずさ、亜美真美回はかなりの落選者も出していました。

 

 

 

 

 

 2ndではモーションキャプチャーが強化され、ダイナミックな動きだけでなく指先もかなり自然に見せられるようになっていました。また、会話や歌詞に合わせた口パクも高い精度のものになっています。スモークや光の演出も強化され、少しでも立体感があるように見せる取り組みがなされていました。

 

 さらに、前回の千早公演で使用された椅子のパフォーマンスも強化され、真の公演では「絶険、あるいは逃げられぬ恋」の際に、真がまず実在の椅子に足をかけ、そこから椅子に飛び乗ってジャンプしてステージに着地、というパフォーマンスを見せます。2ndが初参加という真Pたちの何人もがこれでバグったようですが、私も驚愕しました。

 

 

 

 

 さらに、MCでは明確にステージ袖という設定になり、ソロ曲の演出や衣装選択についてもPとアイドルの対話という形が定着します。また1stであった観客の声を拾うケースも少なくなり、指名はサイドのスクリーンに座席表が表示され、ルーレットで当たった(という建前で)指名がされるようになりました。開演前はもちろん会場外から観客の行動はチェックされており、ある程度事前に当てる人を選ぶことで事故率を下げていたものと思われます。ちなみに、担当グッズを身に着けているPの指名率は変わらず高い傾向でした。

 

 また、公演の外でも実在感を巡る工夫がなされていました。私の参加した範囲内では、律子回ではスタッフやショップ店員さんがいずれも眼鏡をかけて対応し、雪歩回ではスコップ、真回ではジャージと鉄アレイがシアターの内外に設置されるなどのギミックがありました。

 なお、全体の千秋楽だった10月のやよい公演では、これらのギミックが最後に揃うという演出がなされています。

アイマス公式ブログより引用

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 そして、律子回の千秋楽最終公演ではMRの真髄と言える出来事がありました。詳しくは以下のレポを読んでいただければと思いますが、若林直美さんの技量あってこそとはいえ、伝説と言っていいイベントになりました。

 今後どれだけ技術が進化しても、各ブランドの演者がさらに経験と技量を重ねても、あれを越えていくのは容易ではないでしょう。(なお、レポの「あるいは、9.18が終わった日」という表現は今となっては正しくなく、MOIW2023がその区切りだったというべきですが)

 

siden-p.hatenablog.com

※こっちはまだ読めるレポだと思います。

 

 

 また、この公演では亜美真美が史上初めてステージで共演することとなりました。下田麻美さんは一人なのでリアルタイムでは同時に歌唱はできませんが、絶妙に2人で喋っているように見せる演技とそれに応えるモーションキャプチャー班の腕前は、後にENCOREで体験することとなります。

 いずれにしても、2ndの段階で最難とされた亜美真美主演公演を成功させたことは、MRを大きく前進させました。なんでも2人公演は可能と判断した上で、敢えて一番難しい亜美真美でやったそうですが。

 

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 そして、この2ndの「とある公演」には、ミリシタのプロデューサーで後にアイマスの各ブランドアニメやプロモーション関連でも中枢を担うことになるわかちこPこと狭間和歌子さんが訪れていました。「とある公演」の出来事の目撃者となったと思われるわかちこPに対して、佐々木さんが「いつかミリオンでもこういうステージを作れたら」と発言したことで、MRのさらなる発展への道筋が作られていくことになります。

 

 

 

 

■4.ゆくm@sを経たENCORE公演。そして、美希のSHOWROOM配信へ

 

 

 2nd終了から2カ月が経過した2018年12月、「ゆくm@sくるm@s」にてMR ST@GEの技術を活用した企画がありました。番組に亜美真美が生で登場するというものです。

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 MR現地参加していたPは少数だったこともあり、こちらは当時大きな話題となりました。亜美真美はこういうのを等身大かつ目の前で、リアルタイムで観客との掛け合いもしながらやっていたのですが、当時の私を含めた未参加者にもイメージしやすかったと思います。

 

 

 

 

 その後はまる1年続報がなかったMR関連ですが、翌2019年のゆくm@sで2020年2~3月のENCORE公演が発表されます。

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 特に注目されたのは、これまで主演公演がなかった水瀬伊織星井美希の両主演でした。熱烈な美希Pで過去のMR現地にも足を運んでいたぴょん吉P(山崎はるかさん)が思わず「美希いる!?」と叫んでしまったのを覚えているかもしれませんね。

 

 他方、ミリシタでもゲームシステムを活用したミリシタモデルのMR運用も始まっていました。20年1月のミリシタ感謝祭では、事務員の「青羽美咲」がリアルタイムの収録で参加。ただ、この時は試験的運用だったこともあり、後のシーズンエアーなどに比べると動きがかなり粗い印象がありました。

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 さて、ENCORE公演は以下の日程で行われるはずでした。

 

 

 後に勝股Pほかが語っていますが、20年4月をもってDMM VR THEATERは閉館することが決まっており、MR ST@GEは一旦ラストとなる予定でした。

 この時点でバンナムには自前でMR ST@GEをやるための箱も設備もなく、また特殊な設備が備え付けられているDMM以外にこの公演をできる箱もなかったため、一旦最後にという考えのもとでセッティングされたようです。

 チケット戦争は熾烈でした。当日券どころかキャパ350の半分程度しか埋まらない日まであった1stが嘘のようで、特に公演日が1日(3回)しかなく、初主演だった伊織・美希回は入手が極めて困難だったものです。私は自力では亜美真美公演とあずさ公演しか当てられず、連番ほかルールで許されたあらゆる手段を使ってすべての主演チケットを確保します。(札束パンチは使っていません)

 

 

 この頃は既にコロナ禍が始まっており、直前のシンデレラの大阪公演は結果的にギリギリで実施できていたという状況でした。そんな中で、私は幸運にも伊織公演に2回参加します。

 圧巻だったのは、ソロ曲の「プライヴェイト・ロードショウ (playback, Weekday)」。なんと3つ並べた椅子に、伊織とダンサーさん2人がローテーションのように位置を変えながら座るというパフォーマンスが披露されました。ダンサーさん側は投影された伊織を我々のように見られるわけではないので、別の場所でやっているモーションキャプチャー班と完全に息をぴったり合わせなくてはならない……はずです。真の絶険よりさらにハードルの高いパフォーマンスに会場はざわめきました。

 また、この日の伊織のMCも大変素晴らしいものでした。掛け合いそのものは律子や亜美真美回に比べればハードル低めでしたが(というかあの方々が異次元)、公演の実現について「プロデューサーが要望を上げ続けてくれたから私の主演回が実現したんでしょ」という趣旨で感謝を述べられ、担当Pが泣き崩れる姿もありました。

 

 また、亜美真美回は会場各所にこれでもかとばかりギミックが配置され、開演前から楽しめる仕組みになっていました。

 

 公演そのものも、どんな無茶振りをされるかわからない緊張感あふれるMCや、姉妹とダンサー計4人の構成をフルに生かしたダンスなど、非常に自由で躍動感あふれるパフォーマンスでした。

 

 

 残るは翌週の美希、あずさ、そして大千秋楽の春香。そうなるはずでしたが――。

 

 美希の主演回を2日後に控えた2/26、残る全公演の中止が決まります。前日の政府のイベント中止要請を受けたもので、事実上MR ST@GEの終焉を意味しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は流れて20年7月。星井美希SHOWROOM生配信イベントが実現します。これはスタッフにPがいたSHOWROOM側からのオファーで、唯一主演回がないまま終わってしまった美希への救済措置という役割もありました。

 

 

 ソロ歌唱こそあるものの、MR ST@GEと言うよりは18年末のゆくm@sに登場した亜美真美の延長線上と言える内容でけっこう別物でしたが、視聴者数は10万人を突破。多くの人に視聴されることで、ここで一つ風穴が開きます。

 

 ただ、初めてオープンな場で開催したこの試みは前述するところの「野暮」が発生するリスクも高く、千早の時のようなトラブルが起きればどうにも隠せなくなることもあり、一発勝負ということもあって演者さんへの負担はMR ST@GEの比ではなかったようですが……。

 

 

 

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 20年末のゆくm@sでは、リモート出演という形式であずさ、春香が出演。これもMR ST@GEの中止分を意図したものがあったと考えられます。

 

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 さらに翌21年。アイマスチャンネルでの収録番組ではありますが、春香や律子が登場するという企画がありました。今思えば、3.0とMORE RE@LITYプロジェクトへの布石はこの頃から始まっていたんですね。

 

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 MR ST@GEは終わりとなりましたが、演者からの評判は普段のライブとは違う負担があってもなお非常に高いものでした。最近でも今年3月に高槻市で開かれた高槻やよいバースデーイベントにおいて、トークショーに出演した仁後真耶子さんが今後やりたいこととして「MR ST@GE」を挙げてくださっていたのが印象深いです。

 

 

 

 

 

 

 

■5.SEASON-@IR!!!!と、朋花様のお悩み相談室。そしてMRプロジェクト

 

 2021年秋~22年秋にかけて4公演が展開されたシーズンエアーでは、ゲームとリアルの融合、そしてMR要素が一つの見所になりました。

 まず特筆すべきは、収録形式ではありますが告知のPR動画が公開されたことです。MR ST@GE ENCOREからこの頃までに、バンナムモーションキャプチャーの設備を大幅に増強。さらに今や定番となった未来研が完成し、この手の試みをどんどんチャレンジできる環境が整っていました。

 初手のダイヤから最後のスペードの1年間だけでも、PR動画を比べれば手指ひとつをとっても技術の蓄積が垣間見られます。

 

 

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※クローバーの真。キックのモーションは2018年のMR ST@GE当時では見られないものでした。

 

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※同じくちづロコ。最後のロコは必見。

 

 

 

 また、各チーム(配信ライブ参加演者のキャラのみ)のバクステの入場シーンを表現した動画も話題になりました。

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www.youtube.comYouTubeの大きい画面で見た方がわかりやすいですね。MR ST@GEで今後の課題として挙げられていた影の表現が自然にできるようになっています。

 

 

 また、配信ライブの合間には、MRでの掛け合いがありました。こちらは視聴者のコメントを拾っていく形で、後の朋花様のお悩み相談室の土台になっています。スペード公演の後には、初めてMR形式に参加できた田所あずささんが「立ち会った」的な表現は取りつつも、翌週のミリラジでウキウキだったのが印象深いですね。

 

 

 

 

 

 

 一方、コンテンツ全体としては22年夏にはMRプロジェクトが始動します。

 

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 このティザーPVは上述したMR ST@GEのそれと同じ流れで、期待は非常に高まりました。

 

 

 

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 そして本PV。かなりMR ST@GEを踏襲しているもので、私としては「こういうのを目の前で見られたんだよなあ」と懐かしくなったものです。モデルはMRエンジンで運用するいわゆる「ミリシタモデル改」ですが、ミリシタモデルは(当たり前ですが)ステラやスタマスモデルより軽く運用しやすいようで、MR初期の頃に「5体同時に(生で)動かせる」と説明された据え置きモデルよりかなり多く動かせると思われます。設備を増強した今、何体までいけるかは不明ですが……。

 とはいえ、今度のDreamin' Grooveもこのくらいの水準で動いてくれたらなあと思います。

 

 なおこの技術で、収録で実施された魂ネイションズのライブにも春香、貴音、百合子、歌織が参加しています(アーカイブは公開終了)

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 そして12月16日。ミリオンの生配信での集大成的イベントが生配信の中で展開されます。天空橋朋花が事前+リアルタイムで集めた質問に生番組で応える「朋花様のお悩み相談室」でした。

 

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(4:50~。全3回)

 

 

 会場は未来研で、シーズンエアーでのMRと同じ場所です。

 この番組で印象的だったのは、カメラの切り替えでした。これまでは1カメ2カメの切り替えはできていなかったので、明確な進歩ですね。シーズンエアー同様、コメントも拾いながらの番組でしたが、アドリブ要素も交えて朋花らしさが光る番組でした。またやってくださいお願いします。

 

 

 

 

■6.アイマス3.0の開始。そしてDreamin' Grooveはどうなる?

 

 朋花様のお悩み相談室から10日後、アイマス3.0が発表されました。

 

youtu.be

 

 

 PVでもMR要素が非常に多く、かつてガミPやディレ1が掲げた「現実に浸食するコンテンツ」としてのアイマスという概念に、ようやく時代と技術が追い付いてきたように感じます。

 3.0については、カンファレンスのアーカイブが残っているのでそちらもご参照ください。

 

 

www.youtube.com

 

 

 

 そして、この中で告知されたのが、MRフェスティバル(仮)でした。

 

 

 

 

 

 「出演は誰なの」とか「765ASは出るの」とか言われていましたが、私としては過去にMR ST@GEの記事を書いてくださった田端秀輝記者(@hitabataba)が取材で「765ミリオンである」との言質を取ってくださっていたこと、また「765 MILLIONSTARS」が台湾やハッチポッチで使用歴のある、主に「52(50)人からの選抜チーム」の時に使用される名称なため特に心配はしていませんでした。

 

 しばらく続報はありませんでしたが、その後10th Act-1で7/1・2開催と告知され、さらに先週18日のミリラジで詳報が出ました。28日までチケットのアソプレ先行をやってます。

 

 

 

idolmaster-official.jp

 

 驚愕の出演「34人」ですが、それではこのDreamin' Grooveはどのようなイベントになるのでしょうか。

 

 

 結論から言えば、MR ST@GEで言うところの「主演」が数人程度入っている形式のイベントになるのではないかと予想します。

 

 

 

 現段階でわかっていることとして、

 ①公演タイトルがMR ST@GEの副題であった「MUSIC GROOVE」から取られていること。

 ②スペシャルサンクスに「バンダイナムコスタジオMR準備室」「ミリシタMRエンジン」という聞き慣れない名前があること

 ③スタンディング形式(キャパ最大1000)であること、MR ST@GEより公演間の時間が長いこと

 ④後日何らかの配信があること

 ⑤出演キャラの演者さんのうち、既に数人にイベント被りがあること

 ⑥公演のセトリは基本的には同一で、一部歌唱曲が違う

 

 ここまでは確認できます。

 

 

 ①は言うまでもなく、MR ST@GEからの継続性を示唆するものでしょう。②はともに初出の名前ですが、おそらくMTSや朋花様のお悩み相談室、前述の春香のPVなどもこちらが担当しているものと思われます。

 

 

 では準備室とは何か? 何の準備なのか? 答えはおそらくこれに関わるものだと思われます。

 

 渋谷の宇田川町にバンナムが2018年以前から取得していた土地で今年7/1に着工し、2025年3月に竣工する「渋谷プロジェクト」は、いわゆるバンナムシアター(仮)と呼ばれていたものです。こちらは18年時点で複合ライブ施設と明言されており、おそらくコロナ禍で塩漬けになっていたと推定されますが、来月の株主総会で言及があるのではないでしょうか(私はもう株を手放してしまったのですが、もしかしたら事前資料にあるかも)。

 

www.nikkei.com

 

 今のアイマスの施策を考えれば、かつてのDMM VR THEATERのような施設は喉から手が出るほど欲しいでしょう。ですから、複数の施設の中にあのような設備が用意される可能性は少なくありません。……というか、今の路線で自前の箱でそれをしなかったら勿体ないはずですし、それをやるからこその3.0の路線なのかな、と。

 そういう意味では、推定されるキャパと同等に近い神田スクエアホールでのMRイベントは、MR準備室を冠したチームでの初イベントとしては納得感があります。

 

 

 ③についてはまだ何とも言えませんが、公演時間はMR ST@GEの1時間よりは長くなるのではないでしょうか? 1時間半くらいあったらいいなとは思うのですが、椎間板ヘルニア持ちにはなかなか厳しいですね……。

※6/30追記 約1時間と公式からアナウンスがありました。

④については、翌週のSideMの3Dライブイベントでも配信がありますし、DMM VR THEATERの他企業のイベントでも配信はあったのですが、おそらく後者同様に正面固定の構図での映像になるのではないかと思います。ただMR ST@GEを基準にしても、この手のイベントは目の前で見なければ臨場感はガタ落ちするので、現地ほどの感動はないでしょう。

 

 ⑤について。イベント被りは把握できた限りでは1日のMachicoさん、伊藤美来さん、2日のたかはし智秋さん、愛美さん、郁原ゆうさん、香里有佐さん、南早紀さんでした。(6月26日追記)

 なので、このお方々のキャラクターは仮に新規の何かがあったとしてもオケマスの高垣楓、大崎甘奈、Altessimoのような事前収録形式になるのではないでしょうか。ただ、⑥の読み取り方にもよりますが……。

 

 ⑥の「公演のセトリは基本的には同一で、一部歌唱曲が違う」ですが、これの解釈は難しいです。収録なのか生なのか、あるいはMVパートのことなのか。

 MR ST@GEではソロ枠とMCが「生」でしたが、

※MRの1stセトリ。今回はもっと長そう?

 

 この枠が違うのか、あるいは生出演枠が公演によって3種類or2種類あって毎回違うのであれば、上述の方々も被ってない日には出てくる可能性もないことはないのですが……。

 

 ともあれ、かつての取り組みで勝股Pやスタッフの皆様方が「アイドルがそこにいる」感にこだわり続けており、また3Dライブという表記ではなく明確にMR及びMR ST@GEとのつながりをアピールしている以上、今のところは正統進化形として考えていいのではないでしょうか。ですので、技術検証という意味でも複数人のMR歌唱くらいは期待しても良さそうです

 

 経験値という意味でも、百戦錬磨の765ASの演者はもちろん、ミリオンスターズの演者もMTSなどで経験を積んだ方も多いのでそこは安心でしょう。経緯や密度は違えど今やミリオンスターズの演者さんもMR1st時点の沼倉さん、原さんとキャリアの長さはほぼ同等ですし、浅倉さんよりは長いわけです。スタンディングの今回はMCで特定の観客を指名してやり取りすることはないでしょうから難易度も低いですし、この形式かつ複数ならば、生MC難易度が特に高いとされるエミリーや(今回は不在ですが)ロコでも何とかなるでしょう。

 そもそも765ASでさえ、ルーレットで「当たるな」と思うくらいの質問がすっ飛んでくるエクストリームモードだった亜美真美回と律子回はともかく、かなり安全運転な主演回もあったのでみんながみんなアレをできるわけではないです。

 

 ただ、予想通りの公演になったとしても、次回以降は主演相当の子は表記でわかるようにしてほしいところですね……

 

 

 

 

 いずれにしても今回は試験的な要素も多いことが想定され、未知数だらけの公演となります。MR ST@GEと違って神田スクエアホールは完全平面の会場でもあるので、あの時ほどの視認性もなさそうです(ただし音響は結構良いです)。誰にどの程度の出番があるかもわからないので、「担当の出番」を求めていくと人によっては肩透かしを食らう可能性が少なくないかもしれません。

 

 ですが、先々を見据えれば今回がチケット戦争となり大きな需要があることを示せば、2回目、3回目、そしてバンナムシアター(仮)完成後のイベントとして継続していけるはずです。最初はろくに埋まらなかったMR ST@GEも右肩上がりだったゆえに2nd、ENCOREと続いたわけですから。

 これは他ブランドでもそうですが、MR形式であれば、諸事情でステージに立つのが困難、あるいは困難になった演者さんでも参加しやすく、またレッスン拘束が少ない分多忙な演者さんでも参加しやすいメリットがあります。MR ST@GEで伊織回が実現したのも、多分に後者の影響があったでしょう。

 他方、MRに「立ち会う」ことはライブにおける演者さんのパフォーマンスにも大きな刺激があります。平田宏美さんがサンリッチカラフルにおいて、真の看板曲である「自転車」でダンスをこれまで以上に増やした要因の一つに、MR ST@GEがあったことがブログで語られています

 

 

 何にせよ、これからのブランドとコンテンツの未来への新たなる一歩となるDreamin' Grooveが成功裏に終わり、大きなマイルストーンとなることを願ってやみません。

 本音を言うとチケット戦争のライバルは増やしたくないのですが。MR参加経験なしでここまで読んでくださった物好きな皆様、演者さんのライブとはまた一味違ったイベントに、ぜひ参加してみませんか?

 

 

 ……ちなみに。現地に行けることになった方は、繰り返しますがタオルなどの担当のグッズがあれば身に着けていくことをお勧めします。MR ST@GEでは、マジで後ろの席どころか会場外の行動まで見られてましたので

 

 

 

 

 

 以上となります。今回も長文にお付き合いいただき、ありがとうございました!

 また、この記事は以下の記事などから引用、及び執筆参考にいたしました。

 

funfare.bandainamcoent.co.jp

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