紫電Pの雑記帳

ニコニコのブロマガ閉鎖に伴い移転しました。主にアイマス関連の記事を書きます。2021年9月以前の記事はブロマガから移行したものです。。

スタマス発表を9.18になぞらえることへの違和感と、新展開への思い【スターリットシーズン】

(2/9 19:40 末尾に補足を追記、2/10 2:00 9.18の部分で本文追記)



アイドルマスターシリーズの据え置き最新作「アイドルマスター スターリットシーズン」が発表されて半月が経った。1月30日には坂上Pと久夛良木Pのインタビューを含む、ファミ通の特集記事も出た。





さて、アイマス新作発表時はもはや恒例だが、今回もまた大きな波紋があった。ゲームは越境形式だったが、SideMがプレイアブルにならなかったことや公式側の対応が拙かったことなどを理由に、SideMをプレーするユーザーを中心に激しい批判の声が上がったのだ。


ニコ生での発表や説明が拙かったことは賛否を問わずどの立場の方も一定程度の同意はあるだろう。まだゲームの一端が開示されただけではあるが、SideMユーザーの怒りも十分に理解できるし声を上げてよいと思う。
ただ、今月でアイマスP歴14年目に入り、かつて「9.18事件」と呼ばれた2010年の出来事をリアルタイムで体験した人間としては、今回の一件を9.18の再来だの過ちを繰り返しただのとする言説には、いささか違和感が拭えない。




この記事では、もう少数派になってしまった当時からのアイマスPとして、当時のこと、そして今回アイマス公式がそれを踏まえて何をしたと考えられるか、ということを記していきたい。
もちろん、年末の記事でも上げたように、私の考え方を誰かに押し付けるつもりはない。ここまで肥大化してしまったコンテンツだからこそ、古参ほど「Not for me」を貫くべきだと思うし、そもそもそんなことで言い争っても何の益もないのでブルーオーシャンで布教でもやってた方が有益である。したがって、私のこの文章も自己満に過ぎない。

だからこそ、以下の前提を違うと思う人はさすがに時間の無駄になると思うので、ここでUターンされることをお勧めする。


1.過去、据え置きアイマスは原則765ASのシマであった
2.今回はあくまで「アイマス据え置き新作」との触れ込みだった









◆そもそも、9.18事件とはなんだったか





端的に言えば、2010年9月18日の東京ゲームショウ2010とその直後の発表で、アイドルマスター2において水瀬伊織三浦あずさ双海亜美秋月律子の4人がプレイアブル(プロデュース)対象から外れることが明らかになったことに端を発する大炎上である。翌2011年に発表されたアイマス2そのもののシナリオが賛否を呼びやすいものだったこともあり(雪歩シナリオなど評価が高いものもあるが)、東日本大震災を経た11年春まで界隈は荒れっぱなしだった。7月から始まったアニメ版アイドルマスターが、アイマス2の設定をベースにしつつも傑作だったこと、同年11月に始まったシンデレラガールズが独自路線で成功したことでアイマスはさらなる拡大期に入ったが、アニマスが失敗していれば、2010年に演者に示されていた区切りとされていた2015年の10thで、コンテンツそのものが終焉に至っていてもおかしくなかった。

原因は複合的なものであるが、大まかに言えば竜宮小町ら4人の非プレイアブル可、それに対する公式――ガミPこと総合Pの坂上陽三(以下、登場人物の敬称略)と、ディレ1こと石原章弘ら公式側の誠意を欠いた対応が挙げられる。副次的要因としては、4人の非プレイアブル化と同タイミングで発表された、ライバルユニットのJupiter(ジュピター)3人の登場も燃料となった。最近ではジュピターは批判対象ではなかった、とする言説も見られるが、残念ながら事実誤認である。これについては、もう少し詳しく説明する必要があるので後述する。


さて、これを読んだだけであれば「なんだ、やっぱり同じじゃないか」と思う方もいるかもしれない。では次に、関連する事柄を時系列にしていこう。



2010年3月
THE IDOLM@STER MASTER SPECIALの最終作「SPRING」が発売し1st visionが完結。このCDとドラマCDは前年冬に録られたが、アイマス2アニマスなど2nd visionの展開が決まった後の収録だったとされる。ドラマCDのラストは、2ndでの大きな変化も想起させるものだった。収録時期では、アケマスから約5年間雪歩を担当した長谷優里奈の降板前最後のCDとなった。

・7月3-4日
過去最大規模となる幕張メッセイベントホールで開かれた5thライブで、アイマス2のPVが公開される。内容は13人全員がThe world is all one !!を歌うPVで、2日目のPVでは萩原雪歩役の交代が発表。PV明けに浅倉杏美が登場し、坂上Pとともに挨拶する。

・9月18日
この時は竜宮小町というユニットが出るということまでは認知されており、プロデュースできないのでは?、という疑念が上がる中、イベントに坂上P、若林直美下田麻美沼倉愛美原由実浅倉杏美が出演。前述の発表内容、また坂上が降壇し演者が矢面に立たされる形の構成になったことで、いわゆる「声優の盾」と呼ばれる忌まわしいワードが生まれるきっかけになってしまった。

その後、アイマスユーザーの反発の声、ニコニコ、2chを中心に多かったアイマスアンチの荒らし、これ幸いと嗅ぎつけてきたはちま、jin、やらおんなどのアフィブログの際限ない煽りにより、無関係の人間が大量に火事場に流入し事態は収拾がつかなくなる。古くからのアイマスPがアフィブログやそれらの記事に言及する人間を蛇蝎のように忌み嫌うのはこれがきっかけである。

・11月~
THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 2のFirst seasonが順次発売。非プレイアブルの4人は当初含まれていなかったが、約半年後に2nd seasonとして発売される。

・2011年2月24日
アイマス2発売。全体的に物議を醸しがちなシナリオだったこともあり、また反発の声が上がる→アフィブログにより燃える→のコンボが発生する。半月後にはそれどころではなくなったが。ただし、4人を一部プロデュースできるようになったPS3版も含めれば、アイマス2は前作を大きく上回る計約17万本が売れたとされる。


◆9.18の背景には何があったか。



まず、公式側から振り返ってみよう。当時から現職であり続ける坂上Pがこの件に触れる機会は少ないが、この記事でも度々登場するディレ1こと石原章弘は、バンナム退社を前にした2015年12月にこの件について踏み込んだ発言をしている。

まず、4人の非プレイアブル化は少なくとも石原は反発したとされる。退社前なので好き勝手に言ったという見方もないでもないが、退社後も坂上Pとの関係は継続していることから、誰かに責任をなすりつけたわけではないのだろう。

石原は語る。アイマス2はアニメ化を前提、並行した企画であり、そのためにも竜宮小町やジュピターはあの当時のアイマスに必要であった、そのことには納得していると。ただ一方で『自分の言葉の中に「本音・本心」に近い言葉が混じっていないので、説明する言葉に強い「説得力がない」「誠実さがない」と自分でも感じていました。正直に言うと、僕自身もアーケード版を企画し、自分で産み育ててきたアイドルを「完全なプレイアブル」にできないこと、TGSの時点ではまだ納得しきれていませんでした』とも述べ、ユーザーに不誠実な対応をしたことを詫びている。

このことには概ね嘘はないとみられる。例えば三浦あずさは、ASの生みの親である石原が、たかはし智秋の演技と歌唱力に惚れ込んでオーディション前に後付けで作り上げた思い入れの強いキャラクターである。(たかはしのLLCでの発言を聴く限り、AS初期メンバーの演者では事実上唯一のスカウトとみられる)上に抵抗したが及ばず、4人がプロデュース対象から外れるなど誠実な対応ができなかった、とも述べており、そうしたキャラをプレイアブルから外すのは断腸の思いであっただろう。
ただ、当時のバンナムの社風であったとされる極端な競争原理主義成果主義を反映したような商売手法のいくつか(CD歌唱メンバーを人気投票で決めると発表、反発を受け後に撤回)は、後にシンデレラで活用されたシステムなのでおそらく石原が積極的に採りたがった可能性は高いが。

また、初期から現在まで活躍しているある中核スタッフは、SNSでジュピターが08年から企画されていた、また他者からスタッフに預けられていたと明らかにした上で、9.18当日はこれから起きることを覚悟して泣きながら現地に向かったと書き残している。これらのことから、誰かは不明だが「上」とのぶつかり合いを経て2の仕様(とアニマスの骨格設定)が決まり、抗しきれなかった開発陣は炎上を想定しながらも突っ切るしかなかった、と考えられる。

石原は『急激に規模が大きくなっていったアイマスは、ここでいろいろな思惑がぶつかりあってしまったんだと、思います』としている。バンナムの中では色物弱小コンテンツでしかなかったアイマスが予想外の急成長を遂げ、DLCやCDの好調、5000人を超える箱でのライブをできるまでになったことで社に儲かりうるコンテンツとして見出されアニメ化まで決まった一方、当時の石原ではどうにもならないことが起きた、と判断できる。

一方で、この事件から石原は『自分の納得出来ないことはやらない』と覚悟を決めたとしており、その後企画が立てられたシンデレラガールズでは反発を押し切ってあのコンセプトを通している。個人的には首肯したくないが、9.18での挫折がシンデレラガールズの成功を生んだと言われたことがあるのはこのためだ。



さて、対するファンサイドである。

当時のアイマスは、07年の家庭用無印と発売と同タイミングで隆盛したニコニコ動画と切っても切れない関係にあった。コミュ動画や08~09年ごろをピークにニコニコを席巻したPV動画、ゲームのプレイ動画などと組み合わせたim@s架空戦記、いわゆる紙芝居のNovelm@sterなど、プロやセミプロだけでなく動画編集経験がない素人でさえ参入でき、しかも大量に素材が転がっているためゲーム未所持者でさえ動画を作れてしまうという異質な状態であった(実際、私の知る範囲でも10万再生を獲るような人気投稿者でさえXBOXやゲーム本体を持っていない人が複数いた。今さら蒸し返さないが)。

当時は今と比べればアイマスの展開などごくわずかで、公式の供給は少なく、ムーブメントや溢れる作品愛を注ぎ込む先は二次創作しかなかったのもある。アイマス公式はその想定外の――今風に言えばバズを最大限活用し、そのために音源丸上げのような動画を除いて著作権については見てみぬふりをした。どころか、多くのメンバーが見ていたニコマスの盛り上がりに言及したり、また最古参メンバーの一人であったある演者に至っては、特定の人気動画シリーズについてツイートしてしまうこともあるほどだった(さすがにすぐツイ消しされたが)。この頃のライブが前例も実績も少なくまだ手作り感あふれるものだったことも含め、ともかく牧歌的な時代であった。

しかしながら、この時はその牧歌的な空気が滅茶苦茶になった。ニコマスアイマスユーザーのメインのコミュニティである一方で、コメントが容易に消えなかったり当時の2chなどの掲示板以上に荒らしやすかった仕様だったことも災いし、大荒れからのお気持ち表明動画や掲示板上での感情任せの言葉のぶつかり合い、愉快犯的な煽動で泥沼になっていく。残念ながら、まだコンテンツもユーザーも若く、強固な紐帯もなく、そもそもの数も今より少なかったことも災いした。別のコンテンツで言えば軍艦やパークでもそうだったが、火事場に大量に無関係の、あるいは関係の薄い野次馬が押しかけ、あるいはさらに火をつけると、本来のユーザーの存在感はますます小さくなる。




直後のラジオで天ヶ瀬冬馬役の寺島拓篤が出演し(ああいう配慮のできる方なので、当時も相当慎重なスタンスだったと評価されているが)、また沼倉愛美が好意的な反応をしたことも火に油となった。これもジュピター叩きの要因になってしまったところであり、ここでもアイマス公式と坂上Pは演者を守れなかった。さらには4人のプロデュース可とジュピター排除を求めた署名活動まで持ち上がり、実際にお金を落とすユーザーがどの程度いたのかはわからないが署名を集めて提出するという騒ぎまで持ち上がった。アイマス2やジュピターを肯定的に見ようものなら四方八方から罵声が飛んできかねない騒動の中、公式は演者への誹謗中傷や罵倒をやめるよう声明まで出したが、すぐに鎮火までには至らなかった。

Twitterも今ほどの定着度はなかった時代だが、SNS掲示板で際限なく自分の不満と同質の、あるいは納得できるベクトルの意見ばかりを収集し、偏った意見だけを取り込んでモンスターになってしまう方も、残念ながらいた(この手の話に限らないが)




こうした騒ぎの中、直後から人気トップクラスも含めて相当数の動画投稿者が連載を中断したりシリーズを削除することが続くことになる。また、言及がなくとも長期的にモチベ低減→連載中止につながった投稿者もいたことも想像に難くない。ニコマス自体が爛熟期である意味「辞め時」とみた人もいるとは思うので、一概には言えないが。


ニコマスで08-15年まで連載をしていた私も、当時はコミュニティが崩壊していくのを見てヤケ酒を飲むほどだったが、こういう発言をするくらいには連載中止や削除がつらかったし、このままコンテンツが終焉に向かうと思っていた節もあった。外れて良かったが。


また、アイマス2に関連する(と認定されたものも含む)二次創作やイラスト群も、アイマス2を肯定するのかと槍玉に挙げられることがあった。これは火勢が鎮圧に近い状態になった後も終わらず、結果的に創作をストップせざるを得なくなったケースもあるなど、アイマス2ネタを使うことが創作サイドにとって多大なリスクだった時期が少なからずあった。これらに関しては、残念ながらユーザー同士の内戦の色が濃かった、と記憶している。今では所謂「あまあま」コンビのイラストなども普通に描かれているが、アニマスくらいまではやろうものなら焼き討ち対象にされていたのが現実だったし、それがわかっていたからこそ当のアニマスでも接触には慎重に慎重を期していた。








ともあれ、どこまで企業の利益につながっているかも読み切れない、実態の不確かなニコニコでのアイマスバブルはこの辺りから緩やかに下り坂へと向かい始める。また、これを契機にアイマス公式も、実際に金を落とすユーザーとも石原風に言えば「緊張感」を持った関係を意識していくこととなり、野放図で牧歌的な時代が終わることとなる。



◆だからこそ、9.18と今回は違う





駆け足で昔を振り返ったが、ここからは今回の件が当時とどう違うかを一つずつ考えてみたいと思う。


まず、一つ目。

あの時は、SP美希や雪歩の演者交代などで蓄積した不満はあったものの、それは9.18で発生した不満に比べれば相対的に小さなものだった。トリガーも燃料もあくまで、あの日と直後に発生した出来事だ。

対して、今回の一件は、SideM側のこれまでの展開で蓄積した不満が燃料であり、あのニコ生はトリガーのみであったと推察する。私はMについては曲とアニメ履修だけだが、フォロワーにゲームをプレイしている層も多いのでどういう点が不満かはしばしば伝わってくる。その不満には理解を示すし、その不満があったからこそトリガーになったのだろう。ただこの辺りは記事の主題ではないので、何か言うことはない。


次に、経緯の違いがある。アイマス2の際は、全員が登場しプロデュースできると受け止めるPVを発表してから、二ヶ月経っての事件であった。MSSの思わせぶりな台詞もあってアイマス新作がどうなるか不安に思っていたところに、全員登場のPVが届けられて(雪歩の件はともかく)安堵したユーザーも多かった……からの、続報でのアレである。そりゃ荒れようというものだ。

対して、今回は5ブランド越境ゲーと銘打たれていたわけではなく、後述するがおそらく数年前に一度潰えた企画を叩き直して出してきたものだ。9.18の再来と言うならば、PVでジュピターかドラスタを登場させた上で、4月に非プレイアブルだと発表しながらその演者を壇上に上げるくらいしてようやく再来と言えるだろう。

ただし、15thPVをニコ生冒頭に流したのは論外の悪手と言える。あれは5ブランド合同との誤認を招くので厳しく批判されて然るべきだ。





では、9.18で厳しく批判された公式の態度……今回で言えば坂上Pと久夛良木Pの対応はどうだったか。



ファミ通インタビューにおいて、坂上Pは876と315プロからのプレイアブル出演を明確に否定している。『今回はプロジェクトルミナスを中心に考えているので、彼女たちを描くことに注力します。なので、期待には応えられません』とだ。私の知る限り、坂上Pは「まだ言えない」「余地があるので言えない」「そうだけど今は公表しない」という場合、このインタビューで玲音と詩花について聞かれた時と同様に「ノーコメント」を使うので、これは最終決定と言えるだろう。また、久夛良木Pはニコ生同様、「できるかぎりという思いはあるので、一部のアイドルは何らかの形で登場させたい」としている。

実際問題、SideMがメインのユーザーでさえ、まったくの同列で315プロのアイドルが他4ブランドの子たちとステージに立つと考えていたのは少数派だったのではないかと感じている。

客観的な視点として、一体につき数百万とされる最新モデルの制作にしても、男性モデルと女性モデルの共存は容易ではなく、アイマス2のジュピターくらい「寄せて」ようやくである。また、モデルの作り方が変わればダンスモーションの流用はできないし、何より歌い分けの問題がある。その上で出せても数人であれば、起用することでの期待値と天秤にかけてもこうならざるを得ないところはある。石原は退社直前までしばしば予算が少ないと愚痴っていたし、アイマス生みの親の一人である小山順一朗(コヤ所長)の回顧からしても、バンナムは稼ぎの柱であってもそこまで大盤振る舞いしてくれないらしいが。

それらを度外視して出せてもその分のプレイアブル人数が減るのなら、例えばデレミリシャニ枠が圧迫されたとユーザーに認識されたり、ありえない仮定だがASメンバーをそぎ落とした場合、それこそ想定されるのは9.18の再来であり、継続購入ユーザーだけでなくかつてと同じような構図で、M側への猛烈なヘイトが押し寄せかねない。そうなると起きるのは内戦である。そういう意味でも、リスクは冒せない……となる。

むろん、これは理屈と算盤の問題であり、どのコンテンツを重視しているかで違うユーザーの感情の問題とは別である。





「インタビューでこういうふうにハッキリ言ってくれたら荒れなかったのに」



30日のファミ通発売後、そうしたツイートを散見した。坂上P自身は少なくとも表向き、ああいうヘラッとした感じのキャラクターではあるが生き馬の目を抜くような当時のバンナムを泳ぎ切ってきた人物だ。残念なキャラ性と令和の時代にはかなり古いコンプライアンス感覚については今更ではある一方、そうした意見が出ることなど百も承知だっただろう

そもそも知らない人も多いだろうがアイマスのニコ生は原則リハーサルありである。ニコ生のあのやり取りは演者も含めて放送前に一度やっているのだ(毎回かは不明だが、ミニコーナーのゲームすらリハをやっている)。そうした中で、かつて批判されさんざん痛い目をみた坂上Pが、越境において自身と久夛良木Pに風当たりが強くならない立ち回りを考えなかったはずがない。ではなぜ敢えて、自分が矢面に立って集中砲火を受けかねない行動に出たのか。


これは、ニコ生より先に実施されているはずのファミ通のインタビューも踏まえれば明快である。彼は10年前の過ちを繰り返さず、自らの体を張って演者への飛び火リスクを極限まで下げたのだ。



坂上Pは、今度こそ壇上の演者を守った




あの日のニコ生には、ASから中村繪里子天海春香)、デレから佳村はるか城ヶ崎美嘉)、ミリからMachico(伊吹翼)、そしてシャニからは河野ひより(小宮果穂)の4人が出演した。中村がSideMの件について舌鋒鋭く質問する場面で、喝采を送ったり溜飲を少しは下げた視聴者もいただろう。アイマスのセンターは、中村繪里子はSideMのことを見捨てたりしない、と。

だが、坂上Pがファミ通のインタビューのように、あるいはもっと踏み込んでMの不参加についてより納得される形で、あるいはより理詰めで言及していたらどうだっただろう。まず、中村の当該の質問はなくなるか、かなり弱いニュアンスとなる。
公式サイドは隙の少ない対応をした。しかし不満のあるユーザーはまだ相当数いる。その濁流は一定程度公式にも向かうが、それがすべてではない。ではどこに向かうか。


出演した演者である。



頭に血が上ったユーザーというのは、個人の人間性にも左右されるが苛烈な言葉遣いを厭わない。そしてそれを見て、さらに煽ってやろうという輩が口汚い言葉を使い、それをアフィサイトなどが拡散して収拾がつかなくなる。かつては、そんな経緯で「可能性を生み出しただけでアウト」なるユーザーが言ったかもわからない言葉まで生まれた。

10年前を念頭に置いた最悪の想像ではあるが、中村には「寺島を同志とか言っておきながらM不参加に何も言わないのか」「それでもアイマスのセンターか」と罵声が飛ぶだろう。発表時期的にSideMを飛び越して参加した形になるシャニにもその矛先は向かい、河野に対して「Mを差し置いておきながら何ニヤニヤしてる」といった声がぶつけられる。考えすぎと思うかもしれないが、残念ながら集団としてのアイマスユーザーには前科があり、上記のように囃し立てる層も、より過激に煽る非ユーザーはどこにでもいる。


それを想定する企業広報の視点に立とう。どう転んでも不満が出る案件で会見や発表会、パネルディスカッション、あるいは株主総会があるとする。せめて特定のステークホルダーのリスクを極限まで下げたい、その時どうするか。
定番の一つが、誰かが批判される役に回り、第三者に批判させたくない側からそれを指摘させる、あるいは株を上げる行動をさせるのである。おそらく、そうした案件に関わったことがある一定程度の年齢の方であれば、同じ考えに至った方もいるだろう。


失敗すれば茶番劇になるが、中村なら台本を作らなくてもそうしていたであろう実績ある人物だったこともあり、結果を見ればリスク管理は成功だった。批判は坂上Pと久夛良木Pに集まり、笑いありのお楽しみコーナーやゲームへの期待を語ってなお、出演した演者への飛び火は私の観測範囲でほぼなかった。おそらく頼まれなくても質問はしていただろう中村の協力を得て、9.18の再来は意識的に回避されたのである。

なお、12月のツイートを今回の件に結び付けるのは早計だろう。我らが中村先生は相方と違って意味深ツイートの尻尾出さないので確かめようはないけれど、多くの舞台やラジオ、イベントを抱えている身だ。直近も成立しなかった企画や終了することになった番組もある。時系列的にも、今回の件だとするにはやや遅すぎる。


……というかこれは公式も悪いんだけど、仕方ないとはいえ何かとセンターオブセンターに比重かけすぎるから春香も繪里子もその役割に縛られて個を出しにくくなってるのは何とかしてほしい。最近はぬーさんが多少分担したりと工夫している節もあるけれども。



余談だが。
Mの5thライブをあの10thと同日程のメラドで開催するというのは、寺島の当時の発言を踏まえればバンナムの最高に粋な采配であり、15周年に重ねたAS単独ライブの日取りと同様、コスト度外視でコンテンツのアニバ―サーリーを重視する公式の姿勢を改めて示したものと言える。去年はバンナムフェス初日で東京ドームを仕切り、そして翌年はこれ以上ない酬いとなる場所でのドームライブ。たとえドームというのが詐欺と思えるレベルの、地獄の窯のような暑さで交通も不便な箱であっても、正直羨ましい。
発表の順番が逆だったならばもう少し違う結果だったのでは……と思うが、ただの朝三暮四で終わった可能性もあるので、こればかりは何とも言えない。







◆不満が出ない発表は不可能だった




では、そもそも不満が出ないような手法はできたのか。いくつか考えてみたが、越境というコンセプトが前提にある以上はおそらく無理である、と言わざるを得ない。
ここまで肥大化し、ユーザーのベクトルも利害関係も四方八方に向かっているコンテンツではどう転んでも以下のようになるのが目に見えている。





スターリットシーズンは10thの頃のスリースターズを背景としていること、また久夛良木Pから「現在の開発チームと本格的に動き出したのは、17年夏ごろ」と明言されている。ステラステージの開発中だ。しかも、この発言であればそれ以前から企画そのものはあったと読みとれる。
企画が遅れに遅れ、そうこうしているうちに途中でシャニマスのサービスインで現在の形になったのは間違いない。その背景は、坂上Pが18年6月のミリシタ1周年イベントで「技術検証の一環」として出してきたこのPVからも読み取れる。



ミリオンアニメ化への布石の可能性もないでもないが、このPVはどうもスタマスの原型か試作品のように見える。今のところ他にこの技術を活用している場面もないので、これはスタマス開発途中の副産物をアウトプットしたとみるべきだろう。

そして、スリースターズでの展開と言えば、2014年5月発売のOFAが挙げられる。DLCのゲストとしてデレミリの計12人が参加し(876も引き続き参加)、デレからは島村卯月渋谷凛本田未央双葉杏神崎蘭子高垣楓、ミリからは春日未来、最上静香、伊吹翼、矢吹可奈箱崎星梨花横山奈緒が登場した。そして10thライブ後には、スリースターズを統括していた石原がこんな意味深なことを言っている。


765プロPS4で新作が予定されています。歴史が途絶えている訳ではありません。でも『アイマス』は彼女たちだけにカメラが向けられていた世界ではなくなり、より多くのアイドルたちが活躍する世界になりつつあります」


推測だが、スタマス形式の企画自体は5年ほど前からあったのだろう。OFAと10thライブを布石にプラスタのタイミングかステラのタイミングで本来出すはずだったのが、石原の退社かもしくは何らかの事情で企画が保留されたか先送りとなり(その場合、石原退社時のコメントで坂上Pが「あの件どうするのと考えた」と発言したあの件とは3ブランド合同ゲームだったことが濃厚となる。ミリシタやMアニの可能性もあるが)、構想だけが浮いたまま久夛良木Pに引き継がれ、結局形にならずに遅れてしまった……のではないだろうか。設定がアイマス2やムビマスのED後からつながっているように感じさせるものであることも、根拠の一端である。

3~4年前に出したかった企画であれば、合同は3ブランドでという時代だったゆえに反発が起きるリスクも小さい。だが企画が遅れに遅れ、その間にSideMが伸び、末っ子のシャニ追加が必須となってさらに難航し、そうこうしているうちに15周年を迎えてしまったというのが本音だろう。また、スタマスのラスボスは先日お目見えした961プロの玲音・詩花による「ZWAIGLANZ」が有力候補の一つだが、詩花、玲音の実装ペースを見るに、ミリシタ側としてはスタマスがもっと早く出ることも想定していたのではないだろうか。

ともあれ、おそらく候補が16人だったシャニマスはともかく(ストレイライトまで候補だったらスケジュール的に無茶振りもいいところである。久夛良木Pは泣いていい)、デレミリは5枠であればどう転んでも「自分の担当がいない」と憤る声が出てしまうだろう。公式サイドはそういう選び方はしていないと明言しているが、良くも悪くも声の大きい人気上位の担当ならなおさらである。

デレミリシャニの残る初期メンバー各2人の発表は、順当なら追加情報が出される4月となる。想像の余地を残したことと今後への期待感を持たせたことが第一義ではあるだろうが、これも緩衝対策の一環だろう。4月は4月でまた面倒なことになりそうではあるが。




◆それでも、据え置き新作は作らなければならない




どうやっても荒れるんだから合同・越境なんてやらなければいい、という声がある。
前述のとおり、人数制限もある以上どう転んでも(実際に買うユーザーかは抜きにして)不満の声が上がるのがスタマスである。ASメインのPならいいだろとか言われそうだが、残念ながらASメインですら、越境=765ミリオン世界線前提ということもあり不満を噴出させる層はいるくらいだ。無論、それは俗に言う右派のごく一部で、多くの層が歓迎しているのは事実だが。

話を戻す。該当記事が消えてしまったようなのでうろ覚えだが、モバマス成功後、坂上P、石原の2人が据え置き新作について語る機会があった。OFAの発表前なので、13年ごろだったと思うのだが……。

記事での言及は、ソシャゲは成功しても据え置きが保守本流であるということは忘れていないという内容だった。その後にOFAが発表されたので事実上の据え置き発表予告であったのだが、ではなぜ本流なのか。

アイマスがヒットしたのは、元をたどれば各時代ごとの傑出したグラフィックと3Dモデルのダンスによるところが大きい。(楽曲は初期から評価されていたが、ライブが高く評価されるようになったのはもっと後であるし、当初のコンセプトだと今ほどは重視されていない
そしてアイマス2、プラスタと進化を続けることで技術革新も進み、その恩恵が各ブランドに広く行き渡ったというメリットもある。例えば、昨年の39モード実装など我々を驚かせる進化を遂げてきているミリシタも、ステラステージで培った技術を還流されていることが昨年のエンジニア向けの発表会で明示されている。ソシャゲ隆盛の時代も陰りが見えてきつつあるとも言われる現状だが、最先端の技術を研究・検証・発信してキープし続けることはアイマスが走り続けるためには必須なのだ。見込める利益は、覇権を握るソシャゲほどではなくとも。

また、アイマスの据え置きゲーは、新モデルを作った場合は原則2本のゲームを作ってきた。箱無印とL4Uアイマス2とOFA、プラスタとステラと、だ。スタマスがよほど商業的不振にならない限りはどういう形式になるかはともかくもう一本は見込めるし、そうなればそのタイミングで追加されるアイドルも出るだろう。いずれにしても、数は多くないかもしれないが、スタマス経由で今まで手を出していなかったブランドも遊び始めるユーザーは出てくるだろう。私はバンナムフェスのシャニの立場を肯定的に「新規ファンつかみ取り大会」と評したが、これはどのブランドも多かれ少なかれそうだし、ASだって同じである。というかデレミリよりその色は濃いかもしれない。以前の記事で何度か触れたが、近年では、ゲームでASに最初に触れるのはミリシタが主流になりつつあるのだから。

ASメンバーが、既に一定の関係性は築きつつあるミリオンの子たち以外とかかわった時どんな化学反応が起きるのか。また、それ以外の3ブランドも初の本格的越境で同様のことが期待される。これは明確にポイントであり、新作に期待したいところである。


また、4ブランド統一規格の、最新の3Dモデルができたのも大きい。これでAS以外もいわゆる「MR ST@GE」(アイマスMR)形式の公演ができるようになる。先日のミリシタ感謝祭の美咲ちゃんMRや2年前のBrilliant Party!での専用モデル新造を見てもわかる通り、ミリシタやデレステのモデルでは、等身大サイズでのアイマスMRは無理だ。だが、今回の新モデルなら支障はない。越境がベースになりそうだが、人数次第ではデレミリ版単独のアイマスMRもできるようになるだろう。箱の問題はあるが、遠からず美嘉や未来と直接「話す」こともできるようになるのだ(シャニは演者練度的にもう少し蓄積が必要そう)。

なのでそういう意味でも、渋谷のバンナムシアターができる頃には、この件は別としてMはMで等身大でも映える新モデルを作ってあげてほしいのだが……。MRはアイマスが目指すべき到達点の一つなのは間違いないのだし。今回、初のSteamでの販売に踏み切ったのはバンナムシアター構想と同時に発表した海外展開ともリンクしているのだし、そろそろ建設に着手してくれるのだろうか。



◆期待の声も要望も、どちらも上げたい




スタマスがまだ一割程度の情報しか開示されていない以上、現段階ではこれ以上どうこう言うのは難しいだろう。ゲームとしての評価も下しようがない。ただそれは、プラスにせよマイナスにせよ声を上げるなという意味ではない。私も日頃そうしているしJOVの件では特にそうだが、ちゃんと公式に届くルートで意見を届けるのがベストだ。今回の件に限らず、SNSに意見を上げるだけでは承認欲求は満たせても、何度も書いた通り望んだ形の拡散にはならないことも多い。
もっと強く声を届けたいなら、バンナム株主になるのも手だろう。一時期7000円近くまで高騰していたが、四半期決算を受けて7日現在は約6300円まで下がっている。これ以上下がると昨年の購入価格を割りかねない私は気が気でないのだが、今ならたった63万で株主になれるのだ。一応公式サイドが「愛のある叱咤は、時には制作スタンスを見直すきっかけにもなる」と明言している以上、届け方を間違わなければ声が何かを変えることある。叱咤激励も歪まずに直接届いてこそだ。

もちろん、冒頭から何度も書いてある通り、これはあくまで私のスタンスを兼ねた主張であって、それを誰かに強制しようというものではない。ここまでしょうもないブロマガを12000字を読んだ奇特な方でも「Not for me」でなんら問題はないと思う。






(以下追記)
当たり前すぎて書かなかったけれど、リプとか飛んでくるので補足を。
Q・9.18のこと許してるとか、株主になったとか、おまえ公式の犬なの?
A・許してたらTGSの動画も正視できただろうし、石原のこともしょっちゅう枕詞で「功罪半ばする」なんて書かんわ。日付指定で当時のツイート発掘したら、キレ散らかした後にしばらく無気力状態になってる20代前半の私のツイートが見れますよ。今回はあくまで9.18とは事情が違うよというだけです。株も第一義としては、意見を言えるチャンスを増やすための投資に過ぎません。でなければ8万くらい利益出せた時に売ってます。
Q・Mはハブられていいと思ってるの?
A・思ってたらMRの話で「MはMで3Dモデル作って」なんて言いませんし、MRは他のコンテンツ見ても女性向けが強いところがあると思うのでASの次に重視していいブランドと思います。ただ、AS(スリースターズ)を軸としたコンセプトのプロデュースゲーの延長戦ではプレイアブルは難しく、出てくるとして2のジュピターやOFAの玲音みたいな感じではないか、と思っています。また、ツイートで何度も主張しているようにパーティーゲーやSLG形式なら無理なく5ブランドを混ぜられるので、それはそれで荒れるし稼ぎにくいでしょうがその方向性は模索して然るべきと思います。
(追記ここまで)






余談。
インタビューの内容や、ASとのキャラクター性被りはある程度避けたいはずということを考慮されれば、残りは誰が選ばれるだろうか。(DLCは一旦考慮しないものとする)

デレはいかんせん候補が多すぎる上に時間不足で十分に追えていないので、信号機ではないことくらいしか読めないのだが、比較的クセの強いティーンの子を持ってきそうではある(美嘉の胃はまた死ぬ)。ミリは開発時期的には歌織・紬がまず予想されるが、参戦すれば最年長枠となる歌織さんをここで持ってくるかどうか?という疑問もある。25歳児の御方がOFAから続投するならまた話は別だが。スタマスの源流であるアイマス2の没キャラであった(とされる)、レイジュリモモ辺りからの選出や、ムビマス派生とするなら可奈志保を筆頭としたダンサー組、あるいは他とキャラ被りをしないで済みそうな瑞希、あたりもあるかもしれない。シャニはストレイライトは対象外となると、イルミネから灯織orめぐるのどちらかと、放クラかアンティーカから一人か?となるのだが……。役割分担を考えると、夏葉か樹里かなあ。


あと気になるのは、15thイヤー中の映像作品どうすんの、というところである。何も考えていないとは思えないしやるならミリオンだとこれまでは確信していたが、この発表で少しわからなくなったのも事実だ。最近の赤羽根Pの出番の多さ的にも。